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だからどうした、と言わんばかりの表情を吸血鬼は浮かべる。
奴等の肉体は不死。
身体が多少風通しがよくなった程度ではどうと言うこともない。
そう、“普通ならば”。
次の瞬間、吸血鬼は驚愕の表情を浮かべ、絶叫する。
そして、吸血鬼の身体が、貫いた私の槍を中心に、青い焔に包まれた。
私が槍を引くと、吸血鬼はその身の焔を消さんと、床に転げ回る。
「無駄だ。その炎は消えない」
残りの五体が一斉に私に向かって襲い掛かる。
私は近付けまいと槍を身体の周囲で振り回し、自らも回転しながら凪ぎ払う。
痛みを忘れた肉体は警戒心すら持ち合わせてはいないらしく、二体の吸血鬼が私の動きを無視し、身体を霧化させながら真っ直ぐと向かってきた。
その、霧状の身体を、私の槍の穂先が掠める。
瞬間、その二体は初めの一体と同じく焔に包まれ、実体を取り戻しながら燃える。
「その炎が燃やしているのは肉体ではなく、汝等の穢れた魂。その罪を、その炎に依って浄化しているのだ」
燃える仲間を見て、呆気にとられていた吸血鬼の胸を突く。
「罪が贖われるまで、その炎は消えない。そして浄化された魂は、汝等ですら赦し愛される我が慈悲深き“主”の御許へと送られる」
槍を引き抜きながら、左右の手の位置を交換するように半回転させ、背後から襲い掛かった吸血鬼を貫く。
「此れは……汝等への救いなのだ」
槍を引き抜き、残りの一体へと向き直る。
私が貫いた吸血鬼達は皆、自らの罪に依って焼かれていた。
「何なんだお前!?何なんだその“槍”!?」
吸血鬼は腰が抜けたかのようにへたり込み、無様にも失禁しながら叫んだ。
「アレだろ!?ブレイカー共が持ってた『幻想の武具』だろ!?」
『幻想の武具』とは、神話や伝承に伝わる、神々や英雄達が扱う、特別な力を持った武具のこと。
その多くの銘は後世に広く伝わり、数多の偽物が出回った程だと云う。
だが……
「我が“槍”に銘は無い」
「は、はぁッ?」
吸血鬼は想像とは違う答えを受けたのか、声を裏返した。
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