託されし霊剣

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「ここが火乃山都(ひのやまと)かぁ…!」 海に咲く火乃山都特有の【海門桜】の並木道を潜り抜ければ、リーン達を乗せた船は花吹雪に包まれる。 「わぁ、綺麗…まるで夢みたい」 一時のあいだ全てが薄桃色に染まる世界で、ブラウンのショートヘアを優しく撫でられれば、いつも勝ち気な緋色の瞳もうっとりと乙女のそれになる。 それを微笑ましく見ていた視線に気付くと、リズリットは恥ずかしそうに睨み返す。 「どうせあたしには似合いませんよーだ!」 「そ、そんな事言ってないだろ?」 そんな二人を余所に、高櫓(たかやぐら)の家紋に呼び寄せられるように、藍色の鎧を着た男は結い上げた黒髪を揺らし、船首の先から静かに懐かしい景色を見つめていた。 大霊峰(れいほう)畏れ怖慈(おそれふじ)に広がる広大な樹海、それが群島同士を繋ぎ、辛うじて1つの島となっている。 「…帰ってきた。我が故郷、火乃山都」
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