始動する終焉

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「んっ?」 崩れた壁の奥に、小部屋ほどの空間がある事に気付いた司書は、亀裂に頭を突っ込んで中の様子を探る。 「キミキミ、危ないぞ。また崩れでもしたら首がプッツリだよ」 山のような本を運ぶ初老の男が行動を咎(とが)めると、司書は首を引っ込めて向き直る。 「あぁ、館長。いえね、なんだかこの向こう側がやけに人口的な造りになってまして…」 「うん?それはおかしな話だね、そっちには部屋なんてない筈なんだが」 もう一度亀裂の方を向けば、司書の目に何かが留まった。 「あっ!待って下さい。あんな所に本が」 「お、おいキミ、危ないぞ!」 館長の制止する声より早く、亀裂の中へと進む。 光源のない薄暗い空間の中、司書が手にした分厚い本は異彩を放っていた。 かなりの年月を経ているであろう古めかしい表紙に顔を近付ければ、不可思議にも新書のような真新しい紙の匂いがする。 それを手にした司書は、知的欲求に駆られるまま、ページを開いた。
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