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「おおっ…こんな象形文字は見た事がない…!サマール王朝期よりも古い…もしや神生時代の文字か!」
今にも崩れやしないかと恐る恐る空間に足を踏み入れる館長は、後ろから書物を覗き込むものの、古代文字の解読は専門外なので内容はサッパリ。
「やれやれ、研究熱心なのはいい事だけどね、ここもいつ崩れるか分からないんだからほどほどにね」
しかし司書は聞いているのかどうか分からない空返事を返すだけで、心は完全に未知の好奇心に捕らわれていた。
目を輝かせて食い入る司書を横目に、困ったものだと思いつつも、自分も同じようなものだなと、館長は苦々しく笑う。
「ーー最初のこれは、黒い…太陽?多く始まりを意味する太陽が黒いという事は…太陽の生まれる前、最も始めか、それとも太陽の終わり、全ての終わりを意味しているのか…文面から察すると前者か?次のこれは水…いや、揺らめきが枝分かれしている所を見ると炎、というより火か…」
このまま見守っても埒(らち)が明かないと思い、館長が山のような本を抱えて退出しようとした時ーー
「分かったぞ!『始まりは火…』」
「なに!?」
手から大量の本が落ちて、地面に広がる。
貴重な書物に折り目でも付いたら大変と慌てるより先に、館長は司書から本をふんだくっていた。
「ああ!まだ途中なのに…」
司書の不平も耳に届かず、館長は静かに息を呑み、表紙を確認する。
「おぉ…なんということだ、矢張りーー」
亀裂から入ってくる光に照らされ、隻腕の男が人々に光る三つ叉の槍を授け、黒い獣を背負うように背にするように描かれた表紙に、館長はその存在を確信した。
『神託の書…!』
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