11614人が本棚に入れています
本棚に追加
「た、たぁすけてぇー!!?」
そんな男の至福を妨害したのは、けたたましい中年男の声だった。
寝ぼけ眼に映る空は、とっくに橙色に染まっている。
「どうかしましたか?」
大荷物を背負って全身緑で統一させた小太りの“いかにも”商人らしい風体の男に間延びした声を掛けると、商人風の男は段々畑の横で今まで寝入っていた存在に気付く。
「た、助けて下さい!古代竜に、ジュラに追われてるんです!?」
慌てた様子で救援を求められ、男はすぐ段々畑の上から見下ろしてみると、確かに真っ直ぐこちらへ向かってくる古代竜の姿があった。
そこで男は少し困り顔になってしまう。
「参ったな…武器はリズに預けたままだ」
何かないかと周りに目を遣れば、村の誰かがしまい忘れたであろう草刈り鎌を拾う。
ふと昔、初めて古代竜に遭遇した時の事を思い出す。
あの時は我ながら無茶をしたものだと苦々しく笑っていると、商人はそんな締まりがない顔に声を荒げた。
「ちょっと!?もうそこまで来てるんですよ!!」
「あ、あぁ…すまない。さて、どうするか」
最初のコメントを投稿しよう!