始動する終焉

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「ギガアァァー!!」 耳を劈(つんざく)くような咆哮を挙げる大口からは、無数に生え揃った鋭い牙。 岩のようにゴツゴツとしたこの茶色の巨体と対峙するのは、いったい何度目になるだろうか。 思えば、彼の物語はいつも古代竜から始まっている。 端から見れば、所々に穴の空いた小汚い野良着を着て、顔中を泥塗れにした男が武器も持たず古代竜の前に直立していれば、恐怖に身動きがとれなくなったか、気が触れたのかとでも思うだろう。 だが、男は腕を組み、自信に満ちた態度で待ち構えていた。 積み重ねてきた経験が、表情に余裕を齎(もたら)す。 それが癪に障ったのか、古代竜は正面に立つその小さな存在に、自身の最大の武器である後頭部から伸びる尾を容赦なく振るう! 「ひゃあっ!?」 段々畑の影からそれを見ていた商人風の男は、思わず我が事のように目を瞑(つむ)る。 次に目を開いた時には、予想通り空へ跳ね上がった男の姿があった。 ただ1つ思い違いをしていたのは… それが尾によって痛烈に吹き飛ばされたわけではなく、男が軽やかに避けてみせた場面だという事。
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