託されし霊剣

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「…とまぁ、そういう経緯があって手に入れた大切な剣なんだ。コイツは」 甲板に照りつける太陽を反射し、鈍い光を放つ黄土色の刃を、リーンは懐かしむように見つめる。 「へえぇ!そんな強かったんスか、レイカさんの兄貴って!」 ライルは目を輝かせながらリーンの話に終始聞き入っていたが、いつからかリーンの剣よりもカザミの方に興味が移ったらしい。 「そりゃあ強かったさ、1対1であの人に勝てるハンターなんて俺の知る限りそうはいない。なのにそれを鼻に掛ける事は一切しない。カザミさんは正に、男が惚れるような男だったよ」 リーンが自分の事のように嬉しそうに語っていると、そこへレイカとリズリットが並んでやってきた。 「なになに、カザミの話し?」 「そう言えばリーンって、あの頃はまだ自分の事を『僕』って言ってましたよねー」 「そうそう!久しぶりに聞きたいなー」 二人が「ぼーく、ぼーく」と、悪戯っぽく合の手を入れ始める。 別の話題に切り替えて逃れようとするものの、ライルも聞きたいらしく、合の手に参加していた。 やがて観念して、リーンが気恥ずかしそうに頬を掻くと、一斉に手拍子が止んだ。 「ぼ…もういいだろ?」 丁度その時に鳴り響くラッパの音。 「おっと、いけない。そろそろ到着の用意をしないと、乗り過ごしたら大変だ、うん」 リーンは甲板を降り、早足で立ち去って行った。 守られるだけの『僕』はもう卒業、これからは一人の『俺』として、仲間を守り、守られる対等の存在になる… これは誰にも言わない、リーンが責任を負う立場に立った時、脱ぎ捨てた名前である。 (だからもう『僕』には戻らないーー)
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