理想的なRatio.01

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*** 結局その晩、笹木はぐでんぐでんとはいかないまでも結構酔っぱらっていて、私はやつを最寄り駅まで送ってから帰路についた。 我が家は駅から5分の好立地。 見慣れたマンションの灯りに、ほっと一息つく。 もういい時間だし、明日も仕事だから今日はお風呂に入ってすぐ寝よう。 今日早めに上がった分、早く行ってやらなきゃいけないこともある。 バッグからカードを取り出しつつ、門をくぐる。 洋風な作りが気に入って、このマンションを選んだ。 あと、ワンフロアに一部屋なのもとても気に入っている。 そして。 8階建ての8階、最上階に私が住み、7階には実由が住んでいるという何とも素晴らしいシチュエーション。 「あれ、美里ちゃん?」 エントランスへ足を踏み入れようか、というところで後ろから聞き覚えのある声。 おいおい、もし違ったらどうするの、もっと自分の状況考えなよ!と思いつつ振り向くと、声の主はやっぱり美里ちゃんだ、と言ってニコッと笑った。 「ちょっと、気を付けないと見付かるよ」 「あれ、こんばんはの前に怒られた」 「そりゃそうでしょ、自分の状況よく考えてみてよ」 都心のど真ん中から少し外れたとはいえ、人通りも多い駅前の、それも女子が好きそうな洋風な作りで、現に住んでいる9割が女性のこのマンション。 彼女に会いにきているとしか思えないこのシチュエーションで、平気で声をかけてくる、今をときめく大人気俳優。 パパラッチにわざとエサをやっているのかと疑いたくもなる行動である。 「実由が言ってた通りだ、美里ちゃんちょっと痩せたね」 「はぁ?人の話聞いてた?」 聞いてたよ、と私の隣に並んでオートロックの解除を待っているシンくんは、実由の彼氏である。 家族ぐるみの付き合いとかよく言うけど、うちらの場合は親友ぐるみの付き合いというやつで、シンくんとはよく食事もするし、一緒に遊びにいったりもした仲だから、気心は知れている。 そんなこんなで、 「前付き合ってた人、後輩と結婚しちゃったんでしょ」 …知られたくないことも、この通り筒抜けだ。
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