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昔は武士として城主に仕えたワシじゃが、老兵となりその首を切られた。
武士を辞めたワシは故郷である『日向村(ひなたむら)』に戻り、小高い緩やかな丘の上に木小屋を建て、妻の時子と林業をして暮らしている。
人口僅か15人の小さな村。ワシがこの村に戻ってきた目的は二つあった。
ポカポカと日の光を浴びると大きく伸びをする。
青空に広がるフワフワの白い雲が心を清らかにした。
「んー……いい天気じゃ。時子、今日は梅干にしてくれるか?」
「はい。昭治さん、今日も山へ行かれるのですか?」
時子は庭に出てくると割烹着を着て皺を刻んではいるが、優しい表情をする。
ワシなんかに嫁いでくれたのが不思議なくらい綺麗な、心の豊かな女性じゃ。
「あぁ、今日も行ってくるよ。柴の伸びる速度はこの時期早いからのっ」
時子が飯の仕度をしてくれている間にワシは鎌などの農具を揃え、籠に詰め込んだ。
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