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竹から生まれし、かぐや姫。ぬばたまの髪と桜色の愛らしい唇に、薄紅を刷いたような頬は柔らかな笑みを見せます。美しき姫には、求婚を願う者が数多くいました。
山のように積み上げられた縁談は、増える一方でかぐや姫は眉根を下げました。
「おばあ様とおじい様の側から離れたくありません」
はらはらと涙を零し、かぐや姫は顔を伏せます。真珠のように澄んだ涙が袖を濡らしていきました。
「……かぐや」
姫の弱々しい言葉に、おじいさんは感動します。これほど素直に思いを伝えられたのは、初めてのことでした。
今まで「捨てようと思ったの、おじい様が欲しいと頭を下げるならあげます」とお菓子を手渡す娘でした。しょっぱい思いをしながら、頭を下げたのは懐かしい思い出です。
後でおばあさんには素直なかぐや姫の様子を聞けば、必死に練習して作り出した和菓子だとわかりましたが、複雑な気持ちになったことがあります。
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