終バスにのってやってきた

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クロとマツとウメ子のお役目 マツはウメ子からもらった梅の実を見ながら 色々考えていた・・・・ マツが犬になっている時といえば 今あることからなるべく遠ざかり 思い出の中に心をうつした ウメ子はお役目を果たしているらしい ウメ子がいつもグッスリ寝ていたのは きっと力の限りお役目を果たしていたのだろう そう、力尽きてグッスリ寝ていたのだと 同じように犬になっても、ぐうたら犬マツ 現実逃避のマツ 毎日、切羽詰まった生活のマツにとって 「いぬの自分」の時こそ、唯一解き放たれていたひと時だった 自分がモドカシクやりきれない気持ちのマツ マツの目から涙がこぼれた クロは泣いているマツの顔を覗きこんで しばらく黙って側に座っていた クロはマツの心が落ち着くまで待っていた マツはそんなクロの優しさに何度助けられたことか・・・ クロは静かな声で呟いた 「マツにはマツのお役目、ウメ子にはウメ子のお役目」 「お役目は、人それぞれ」 クロはゆっくりと立ち上がり小屋へもぐり込み 大きく口を開けあくびを一つすると 目を閉じて寝てしまった いつの間にかお役目を終えて帰ってきたウメ子が 「クロにはクロのお役目だね」と呟いた
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