終バスにのってやってきた

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しましまの足 たぶん もうこれで おしまいの回想・・・ 長いこと身の丈3センチの犬になり マツは散々思い出の中をウロチョロしていたが そろそろ元の自分に戻らないといけないことに・・・ マツは何となく気づいていた 最後の回想で思い浮かぶことは しましまの足を長く保てるよう どれだけ汗を流したことか・・・ そんなことでいいのだろうか? たくさんの大切な思い出の中で最後に思い浮かんだのは 何故かしましまの足 しましまの足の話を誰かわかってくれる人はこの世にいるのか 誰も知らないしましまの足のこと そんな思い出がマツにとっての おしまいの回想だった・・・ マツは春になった町を足早に歩いた マツはいつも寝床にしていた赤いミンサ織のポシェットをして歩いた 身の丈153センチのマツに戻っていた 七分咲きの桜の木を少し見上げた そして歩きながら カシミヤのスカーフを足で蹴り上げた トメ子の姿を思い出していた 住み慣れた木造の一軒家を余儀なく去らなくてはならなくなったのは 去年の夏・・・ マツとウメ子とトメ子は五〇年の思い出を片付け引っ越した マツは心の整理ができないまま半年が過ぎていた トメ子は終バスで帰ってきたあの夜 カシミヤのスカーフを蹴り上げたとき、吹っ切れたのか もうここへは来ることはなかった
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