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村の若い子から聞いた模様を、ありったけの想いを込めて刺繍したハチマキ。
昭治さんは桃のようだと笑っていたけれど。
「・・・本当。こうしてみると桃みたい」
わたしの刺繍した模様の下には、血塗られた昭治さんの指の跡。
それが桃の葉のようにも見えてしまう。
「・・・昭治さんっ」
ハチマキを握り締めて、胸に抱きしめる。
昭治さんが深い眠りについてから、初めて零した涙だった。
太郎がいつしか『桃太郎』とみんなに呼ばれるようになって、少しずつではあるけれど、外にも出るようになった。
「モーモーちゃん、あーそーびーまーしょ」
「はぁい、ちょっとまっててねえ」
お友達の沙耶ちゃん達に誘われて、いそいそと何やら支度をする桃太郎。
彼が手にしたものを見て、腰が抜けそうなほど驚いた。
「た、太郎。それをどこから!?」
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