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それから悲しむ暇もなく、桃の世話に追われてしまう。
「ばぁば」
「何ですか?」
夫が元気な頃から、わたしは様々な仕事をして家計を支えてきた。
いつも柴を刈ると言って山に出かけては、服も身体もボロボロになって返ってきてた昭治さん。
もちろん柴なんか刈っちゃいない。
何をしているか、わたしにバレていないつもりだったようだけど。
死ぬまで武士でいたかったあの人は、引退した後も毎日修行をしていたのだろう。
そんなあの人だから、好きだった。
だからわたしは繕い物や、着物の端切れを生かして小物を作っては売って、家計の足しにしてきた。
今もその延長で、小間物を作ってる。
「肩もみとんとん」
桃の頭の幼児は、あっという間に言葉を覚え。
こうしてわたしの肩や背中を、叩いて労わってくれるようにまでなった。
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