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「まあ、ありがとう。嬉しいわ」
昭治さんが傍にいなくても、悲しみの底に沈んだままで無かったのは、この可愛らしい桃の子のお陰だった。
「ねえ、太郎や。お外で遊んできていいのよ?」
いつもわたしの周りから離れず、ひとりでは外に行かない太郎。
「・・・お外、こあい」
悲しそうに俯く太郎に、胸が痛んだ。
『昭ちゃんとこに、桃の化け物がいる』
村人がそう噂しているのは、わたしの耳にも入ってきていた。
その度に、
『馬鹿言ってんじゃないよ!あの子は優しくて可愛い子なんですからね!』
『時子婆さんが怒ったぞー』
村人と言い合うはめになっていた。
昔からこの村に住むわたしたち夫婦は、ちょっとやそっとじゃみんなの信頼を失う事は無い。
だからこそ、気味悪がってはいても、村の中に住まわせてくれるのだから。
でも。
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