1 桃を被った桃太郎

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「やーい!桃っ子!化け物の子ーっ!!」 村の子供たちには、格好のからかいのネタになっているようだ。 子供は、時として残酷だから・・・ わたしの身体にしがみついて、肩を震わせている太郎が不憫でならなかった。 「ばぁば、もつ」 「まあ、持てるかしら?大丈夫?」 山へ湧水を汲みに行く道中、最近では太郎が桶を持ってくれる。 行きは太郎が。 帰りは水が入って重いので、わたしが持つ。 ひとりで留守番を嫌がるので、毎日こうして一緒に山を登っては水を汲む。 「このお山にはね、神様のくれた湧水があるのよ」 わたしの母から教わった、村人にも昭治さんにさえも教えていない神聖な湧水の場所。 若い時は日に何度も汲みに行って、食事などの生活の為に使っていた。 年老いてからは、せめて昭治さんに持たせるおむすびの為にと、日に一度は汲んでいた。
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