1 桃を被った桃太郎

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太郎が来てからは。 また以前のように、日に何度も水を汲みに行かなければならなくなってしまった。 なぜなら。 太郎は、霊水で作った料理しか受け付けないからだ。 「いこ。ばぁば」 「はい、行きましょう」 いつの間にか、わたしの手を引き歩くようになった太郎を見て。 水を汲みに行く事なんて少しも、苦には思わなかった。 村人さえ知らない獣道を、ひたすら上へと突き進む。 「太郎、山で迷ったらお空を見なさいね」 「そら?」 「そう。空を見ながら上に登るの。下っては駄目よ」 山に入りながら、道々太郎に色んな事を教えてゆく。 「これはたべられる?」 「それは駄目ね。よく似ているけど、毒があるわ」 草や木の実、キノコに至るまであらゆる知識を伝えてゆく。 いつか、ひとりでも生きていけるように。
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