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「──っ!
ちょっと優斗、昨夜言ったじゃない。詳しい説明は今朝してくれるからって。
誰かさんが居なかったからなのよっ!」
珍しく強い口調で、久留実は俺の鼻先に人指し指を突きつけた。
……のだが、その指は袖に隠れたままで見えず、あろうことか余った袖が俺の自慢の高い鼻を叩く始末だ。
ま、おにぎり食いながら、久留実の話を半分も聞いてなかった俺も悪いが、そこはそれ。
「おい久留実。いい男の鼻は世界の宝だぞ。それにいい加減服直さないと…………
……………………ない乳が見えるぞ」
瞬間、平手打ちが飛ぶ。
そんなものを紙一重でかわすのは俺にしてみりゃ朝飯前。
だってのに、またまた袖が頬を打つ……。
「……あ~、ないは言い過ぎた……。小さいに訂正しとくから、とっとと顔洗ってこいよ。先行っとくからな」
まだ何か言いたそうな久留実に背を向け、昭俊を促して歩き出した。
当然俺なんかの言う通りに動くヤツじゃないが、今はこっちに分がある。
「ついて来ないなら……バラすぜ」
「っ──ぐ?!」
俺の言いたいことが分からないほどバカじゃない。
俺がバラすと言ったのは、久留実とのやり取りの間、俺を口撃してこず無言だった理由だ。
あるかないか分からないような、見えるか見えないか分からない部分を凝視してた昭俊をムッツリ野郎に認定しよう。
ふむ……、身体のキレはまだまだだが、頭と魔力の状態は悪くないな。
まったく、ここの瞑想室は極上だ。
改めて思うが、うちの旧式のとは訳が違う。
魔導結印を得たら、本気で導入を考えてもいいかもしれない。
もっと弱みを握れば、昭俊に買わせることはできないものか……。
「まったく、レディに対する言葉遣いがなってない。
そもそも彼女の味噌汁を食べておいて、なんだ、あの態度は……」
……いや、何で知ってんだよ。ムッツリの上、変態ストーカーとは畏れ入る。
一応、魔術師としての能力、センスなら同世代の中でもおそらくトップクラス。
味方にしといた方がいいはずなんだがな……。
……………………
…………やっぱ無理だな。
一生、こいつと協力し合うことなんかあり得ない。
確信を得て、俺は昭俊を置き去りにして歩く速度を上げた。
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