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──その建築物をなんと称すればいいだろう……。
お堂……?
教会……?
神殿……?
土地神様なんてのがいてるとすれば、祀られていてしかるべき建物ではあるだろう。
けど、そういった名称で呼ばれるべきモノではないような気もする。
あえてシルエットだけでも似てるものを上げるなら、底辺が六角のピラミッド……。
それが、小高い雪の丘の上に建ってる。
雪が積もってなければ、その丘は円墳みたいに見えたかも……と考えて、眉をしかめた。
「……どっちも墓じゃねえか……」
「なんか言った? 優斗。キレイで荘厳な建物だもんねえ……」
俺とは真逆の感想を述べる久留実。
ま、確かに雪よりさらに真っ白い壁はキレイではある。
けどそれも、何かを隠蔽するための不必要な白さに感じる。
「…………。
考えすぎだな。どうも根がひねくれてると、見方までひねくれるらしい」
「ちょっ、誰がひねくれてるって言うのよ!」
俺の呟きにいちいち反応してくれるのはいいが、なんで自分への悪口としか捉えられないのか……。
「おまえのことじゃないから安心しろよ」
そう吐き捨てると、真っ赤なニット帽を潰すように久留実の頭に手を置いた。
俺が長身なせいもあるが、小柄な久留実は俺の胸くらいの背丈しかない。
なかなか置き具合のいい頭なわけだ。
「人の頭に手を置くクセ治したほうがいいと思うよ」
「問題ない。この頭以外に乗せる手は持ってないからな」
そう、あしらったのだが、いつまでも油を売っているわけにもいかない。
間違いなく俺らがラストだ。
その証拠にそこの石灯籠のとこに昭俊がいる。
「やあ、ようやくのご到着だね、久留実ちゃん。
そこの使用人くんが粗相なかったか心配してたんだよ」
もはや、ツッコむ気にもなれない。
久留実に対する愛想の良さと、俺の扱いの酷さの徹底ぶりには感心してしまう。
「あ、昭俊さん。わざわざ迎えにきてくれたんだ。
あ?! もしかして、もう皆待ってるの?」
皆って言うのは、一緒に“結いの儀”に臨む連中のことだ。
儀式には六人の面子が必要だからな。
一応昭俊もそのひとりではある。
俺と久留実は昭俊の案内で、山小屋に向かった……。
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