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「僕を待たせるとはいいご身分だ、と言いたいとこだけど、遅刻したわけじゃないんだ。
特別に謝罪は必要ないからね」
これは集まった中では最年少の言葉だ。14歳という年相応の態度ではないが、コイツくらい優秀だと、天狗になるのも分かるな。
南雲傑(ナグモ スグル)というこの少年、魔術の名門南雲家の御曹司なのだが、名門の名に恥じないだけの才能と潜在力を有している……らしい。
一応面識はあるが、初対面みたいなもんだからな。詳しくは知らんのだ。
「ありがとう、傑くん。あ、『魔素(マナ)と魔喰(マクイ)の考察』読んだよ。やっぱりさすがよねぇ」
「うん、実戦にも応用できるように著したつもりだったからね。それなりに理解しやすかったんじゃないかな……」
……さて、何の話だろうか……?
そういえば、久留実よりさらにチビっこいこのガキが、魔術師協会を通して論文を発表したとか聞いた気もする。
ためになるよ、と久留実から渡された気もするが、はて何処にやったろう……。
本棚で見た覚えはないが……。
いや、もちろん読んだ記憶もないが、もしかしてゲーム機の台にしてるのがそれかもしれない……。
うむ、そんな気がしてきたな……。
さすがにラーメン食うときの鍋敷きに使ってるのは違う気はするが……。
「……っと、ちょっと優斗ってば!」
「お?! なんだ? 鍋敷きは誤解だからな」
「……どこに意識飛ばしてたのか知らないけど、挨拶もまだじゃないの」
その瞬間の周りの十の目。俺は一生忘れることはないだろう……。
「……お久しぶりです、久我くん。もう怪我は大丈夫……なの?」
そう俺の心配をしてくれたのは、崎山聖美(サキヤマ キヨミ)さんだ。
ここに集った中では一応最年長なのだが……、その性格は南雲のガキとは真逆だ。
控えめでおしとやか、と言えば聞こえはいいが、何せ覇気が薄い。
「ええ、大したことないですから。けど、真面目に心配してくれたの、崎山さんだけですよ」
笑いながら言う俺に微笑んでくれる。これが癒しというやつだろう。
世間一般ならひとつの理想系……。
けど、魔術師としては致命的。この人には良くも悪くもアクがない。
魔術のセンスはいいし、俺も何度か助けられはしたんだがな……。
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