合流

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 ……後ろから何やら不穏な視線を感じる。  おそらく一番心配してたはずのアレが、俺の台詞に反応したのだろう。  その視線から逃げようと辺りを見回し、最後のひとりと目があった。 「よろしく。私は矢倉孝次(ヤグラ コウジ)。一応初めまして、と言っておこう。噂は聞いているよ。久我くんに秋山さん」 「それはどうも。こちらこそよろしく」 「あ、初めまして、矢倉さん。よろしくお願いします」  ごく一般的な挨拶と握手……。  言い回しに何やら含みを感じるが、そういう性格なんだろう。  俺もこの男の噂は聞いてる。  矢倉の家ってのは家柄でいえば南雲家よりよっぽど古い。  ただ、知識と歴史はともかく、魔術師としてはここ何十年まともな人材はいない。  その矢倉家の期待の星がこの男らしい。  ま、どれほどの実力者かは正直知らない。  だがそれも関係ない。“結いの儀”はあくまで儀式だ。  参加者同士でやり合うわけでもないし、何かと戦うわけでもないって話だからな。  と、参加者六人が揃った山小屋のリビングルームの戸が開く。  で顔を出したのが初老の男性と俺らより少し上くらいの若い男。 「皆様、お揃いのようですね。私がこの六角荘の管理人、村瀬と申します」  ということは、白髪のこの男性が儀式の管理責任者でもあるってことだろう。 「はい、よろしくお願いします。  あの……、そちらの方は……?」  これは久留実だ。  気にはなっても実際に問いかけるような気遣いをするのは、この中じゃこいつくらいだろうな。 「ああ、彼はあなた方のお世話を手伝ってくれるんです。短い間ですがここで生活していただくことになりますので」 「初めまして、刹那(セツナ)です。何かありましたら、ご遠慮なく仰ってください」  ……その刹那という男からは違和感を感じる。銀髪長身のいわゆるイケメンで物腰も丁寧なのだが……。  濃すぎるサングラスは別にいい。何か理由があるのだろうし、単に趣味でも構わない。  だがなんだろう。この男が身にまとうのは俺らと同じ気配。  魔術と近しい存在のはず。しかもこの場にいる以上、この街の関係者……。  同世代の俺らが、まったく知らないってのが不可思議だ……。
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