5人が本棚に入れています
本棚に追加
……後ろから何やら不穏な視線を感じる。
おそらく一番心配してたはずのアレが、俺の台詞に反応したのだろう。
その視線から逃げようと辺りを見回し、最後のひとりと目があった。
「よろしく。私は矢倉孝次(ヤグラ コウジ)。一応初めまして、と言っておこう。噂は聞いているよ。久我くんに秋山さん」
「それはどうも。こちらこそよろしく」
「あ、初めまして、矢倉さん。よろしくお願いします」
ごく一般的な挨拶と握手……。
言い回しに何やら含みを感じるが、そういう性格なんだろう。
俺もこの男の噂は聞いてる。
矢倉の家ってのは家柄でいえば南雲家よりよっぽど古い。
ただ、知識と歴史はともかく、魔術師としてはここ何十年まともな人材はいない。
その矢倉家の期待の星がこの男らしい。
ま、どれほどの実力者かは正直知らない。
だがそれも関係ない。“結いの儀”はあくまで儀式だ。
参加者同士でやり合うわけでもないし、何かと戦うわけでもないって話だからな。
と、参加者六人が揃った山小屋のリビングルームの戸が開く。
で顔を出したのが初老の男性と俺らより少し上くらいの若い男。
「皆様、お揃いのようですね。私がこの六角荘の管理人、村瀬と申します」
ということは、白髪のこの男性が儀式の管理責任者でもあるってことだろう。
「はい、よろしくお願いします。
あの……、そちらの方は……?」
これは久留実だ。
気にはなっても実際に問いかけるような気遣いをするのは、この中じゃこいつくらいだろうな。
「ああ、彼はあなた方のお世話を手伝ってくれるんです。短い間ですがここで生活していただくことになりますので」
「初めまして、刹那(セツナ)です。何かありましたら、ご遠慮なく仰ってください」
……その刹那という男からは違和感を感じる。銀髪長身のいわゆるイケメンで物腰も丁寧なのだが……。
濃すぎるサングラスは別にいい。何か理由があるのだろうし、単に趣味でも構わない。
だがなんだろう。この男が身にまとうのは俺らと同じ気配。
魔術と近しい存在のはず。しかもこの場にいる以上、この街の関係者……。
同世代の俺らが、まったく知らないってのが不可思議だ……。
最初のコメントを投稿しよう!