晩夏

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暮れゆく夏の黄昏れに 草いきれと畦に立つのは誰かいな 青い稲穂の言うことを だんまり聞いてやったのは 鬼のままでは眠れない 泥に細く呟いて 目玉見開き空仰ぎ 死んだ蝉の瞼を閉じるの誰かいな 欠けてしまった薬指の 爪の先をじっと眺めて カラの体に響いてやまぬ 古い流行歌を聞いた 煤けた窓の向こうでは 夕焼けた空が輝いていて 俯いた街が影に落ちていく 欠伸のようにはじまって やがて静かに終わっていく そういった類いのはじまり 晩夏を見つめる猫が小さく くしゃみをすると同時に 電車は西への片道を走る 遠くで誰かが泣いている 隠れん坊の鬼が泣いている 鬼のままでは眠れぬと 鬼のままでは帰れぬと もうすぐですよ あと少しですよ もうすぐですよ もうすぐですよ 暮れゆく夏の黄昏れに 暮れゆく夏の黄昏れに
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