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窓辺が好きだ。
サフランはふわふわと揺れるレースのカーテンを眺めて呟いた。
立派な球根に育ったサフランは手間いらずだ。
土の中に居る必要すらない。
土も水も要らない、手間いらずの栽培が可能なのだ。
好きなところにポンと置いておくだけで、勝手に育って、勝手に花を咲かせることができる。
根も張らないし、室内の日の当たらないところに置いておくだけで勝手に育つ。
食卓の上だろうが、デスクの上だろうが、カゴの中だろうが、皿の上だろうが、勝手に育つ。
5月を過ぎた頃には土から出して手間なし栽培が可能だ。
手間をかけずに紫の可憐な花を咲かせる、自分は優秀な植物だと、サフランは自分で自分に感心している。
しかし、人間にとって紫の花はさして重要ではないようだ。
赤い雌しべにしか興味がないと言っても差し支えない。
なにしろサフランといったら、糸くずのように細くて赤い、ひょろーんとした高級スパイスのイメージしかないくらいだ。
サフランという花が存在していると認識している人間がどのくらい居るのか怪しい、と、サフランは睨んでいる。
何しろ、スパイス名がサフランだから、サフランと呼べば赤い糸くずのような細くてひょろーんとした何かが返事をすると思っている人間も少なくないのではなかろうか。
サフランは、クロッカスの仲間である球根植物の仲間であり、あの赤くてひょろーんとしたものがサフランの全てではないのだ。
あの赤くてひょろーんとしたものが畑一面に生えていたら、それはそれで気持ち悪いだろうと、サフランは思った。
だって、あの赤くてひょろーんとしたものは雌しべなのだ。
雌しべだけで生えていたら気持ち悪いし、雌しべしかない植物ってもっと気持ちが悪いだろうと思う。
少なくとも、呟いているサフラン自身は、そう感じていた。
あと、あの赤くてひょろーんとしたものを雄しべと勘違いする人多すぎ、とも感じていた。
あの赤くてひょろーんとしたものは雌しべであり、黄色いほうが雄しべである。
黄色いほうの雄しべには香辛料としての効果はなく、着色料などに使われていることがある。
雄しべと雌しべを混ぜて粉砕してあるものは、香辛料としての効果はちと低い。
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