第1章

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 自分が何番目に居るかを知るのは、テスト後の担任との二者面談の時である。  そんな中で、常に上位に居ると噂される女生徒。 だが風使は、頭が良いとか悪いと言う以前に、彼女の厭世的な雰囲気が大嫌いだった。  常に実力を出し切らないまま、必死と言う言葉とは無縁に生きる苦労を知らない奴。楽をしている癖に、物事を悲観的に見ているインテリ。そんな雰囲気を持っている事と、もう一つ。  最大の理由は、メアの研究者の一人娘だからだ。  風使にとってみれば研究者も、影の救い手の教祖や信者も同じ部類の人間としか思えない。  どちらも自分の立てた仮説を、他人に吹聴しているに過ぎないと考えている。  だから取り巻きの信者が、他人でいたい自分に声を掛けて来る事が邪魔臭い。  そして『影の救い手』を嫌う魔使いが、自分に声を掛けて来る事も。  すうっと、白い横顔が本から離れる。  風使は反射的に視線を窓に向けた。 (こっちに気付がないでくれ)  話し掛けられる事は、絶対にないと言い切って良い筈なのに思わず願う。  ガタン。 カーブで電車が揺れ、窓の外を流れる風景がゆっくりになる。  ホームへと電車が滑り込み、ドアが開いた。人の列が、ぞろぞろと降りて行く。
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