第11話 挿話1「文芸部員を紹介します」

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 まずは一人目、三年生で一番まともな人。というか、部活で唯一の常識人「雪村楓」さん。だいたいいつも、窓辺で本を読んでいます。一日一冊か二冊のペースで読み進め、律儀に感想を書いています。今はちょうど、文庫に目を落として、残り少ないページの文字を追っています。姿勢を正して、首を曲げ、眼鏡の奥の目を輝かせています。口元がわずかにほころんでいるのは、きっとハッピーエンドが近いからでしょう。周りの音は耳に入っていない。そういったご様子です。僕は、そんな真面目で真剣な、楓先輩が大好きです。  二人目は、三年生でちょっと強面な人。女番長と評判の高い、「吉崎鷹子」さんです。  背が高く、腕っぷしが強く、きっぷがいいです。顔はモデルのようにシャープで、高身長なことと相まって、黙っていれば相当な美人さんです。でも、しゃべると怖いです、鷹子さんは。何というか、迫力があるんです。相当なものですよ。道を歩いているヤクザを、追い払ったという噂もあるぐらいですから。  そんな鷹子さんは、女の子に人気があります。よく、ラブレターとか、チョコとか、クッキーとかをもらって、部室にやって来ます。そして、僕の方を見て、「餌をやるか」と言って、食べ物を与えてきます。僕の体重が、平均よりも、少しでも重いとすれば、その七割ぐらいは、鷹子さんのせいだと思います。 「おい、サカキ」  あっ、鷹子さんがやって来た。僕は、思わず身構えます。「果たし合いの立会人になれ」とか言われると困ります。鷹子さんは、むすっとした顔で僕の横に座ります。そして、「昨日のテレビは、当然録画しているよな」と聞いてきます。それはまあ、ハードディスクに保存していますけどね。リアルタイムで見ているとはいえ、あとで見直したくなることもありますし。 「いいか、サカキ。その録画した奴を、メディアに焼いてもってこい」 「どの番組ですか?」 「それを、私の口から言わせるか? つべこべ言わずに全部だよ!」  うわあ、モヒカン族だ。何だか知らないけど、先輩は昨日のどれかの番組を見逃したらしい。ドキュメンタリーだろうか、バラエティだろうか。でも、僕が録画しているのは、アニメだけなんだけどな。お気に召せばいいのだけど。
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