第一章 死者の生還

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 西方大陸の北部に位置する国、海星王国ジェネルレイン。  そして、最北部にある竜王公国テンス。  その間にある島国アーゼーイール。  かなりの寒冷地帯であり、大陸から離れている事から生活環境は快適とは言い難い。  だが、広陵たる風景は雄大であり、古代遺跡、透明な湖、豊富な海産物ともあるため観光スポットとしては有名であった。  ルヌの村。  リヒャラ遺跡から西部に二十キロ、海岸にも近い地点にその村はあった。  村の西部にある一軒家の屋根の上で、黒髪の少年は空を仰ぎ見た。  頬に触れた冷たい感触は、空から舞い降りてきたモノを簡単に示唆していた。 「とうとう降ってきたか~」  どんよりとした空から舞い落ちてきた雪を見てから、身震いして屋根から降りる。  てきぱきと梯子を外して物置に仕舞うと、少年は直ぐに家のドアを開いた。 「姉さん! やっぱり降ってきたよ!」 「やっぱり、屋根の方は大丈夫?」  奥の厨房から声だけが返ってくる。  それを聞きながら、少年は素早く外出用のリュックを背負い出した。 「屋根は平気だよ。これなら春になっても雨漏りはしない。本格的に降ってくる前に、川の仕掛けを回収してくるよ」 「分かったわガルン! 今日は早めに帰ってきなさいよ」 「了解、姉ちゃん!」  そう叫ぶと、ガルンと呼ばれた少年は家を後にした。    
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