240人が本棚に入れています
本棚に追加
木造二階立ての家から西に向かって走り出す。
開いた道の周りには針葉樹林が立ち並び、夏になればここぞとばかりに生い茂る。
それでも、寒波などを防いでくれる有り難い存在なので無碍には出来ない。
道を走っていると、少し離れたお隣に住む爺さんが手を振っているのが見えた。
「とうとう降って来やがった。今のうちに家の自家菜園から野菜もってけ!」
「分かったラナド爺さん! 変わりに後で姉さんのジャムを持ってくよ!」
手を振りながら道を駆け抜ける。
険しい山々の上り下りや狩りで培った健脚により、十に満たない少年が大人顔負けの速さを身につけているのは、この地方でも珍しい才能と言えよう。
小一時間で川に到着すると、仕掛けた魚捕りようの罠を全て開けていく。
冬になって川の表層が凍る場合もあるので、罠は全て取り外すか、ダメになる覚悟で放置するしかない。
「良し!」
ガルンは罠にかかっている魚を見て満面の笑みを浮かべた。
予想より罠にかかった数が多い。
これなら周りの家に何匹か配れる量だ。
最初のコメントを投稿しよう!