第一章 死者の生還

4/17
前へ
/1407ページ
次へ
 ガルンはリュックから網の袋を取り出すと魚を素早く押し込んだ。  もう少し気温が下がれば、魚は外気に触れているだけで凍りつく。  冬場は凍った魚をスライスして塩をかけて食べると言うのが、オーソドックスな食べ方だ。  罠を一通り川から取り出すと、数十メートル離れた小屋に次々と放り込む。  降り始めた雪は本格的に積もる勢いだ。  ガルンはかじかんだ手を息で暖めながら、急いで家路についた。         ◇ 「姉ちゃん、ご近所から色々貰ってきたよ!」  近所で物々交換をしてから家についた頃には、辺りは急速に薄暗くなっていた。  戦利品を次々に玄関周りに置いていく。  この地方では始めから物々交換を念頭に、被らないように野菜を作るのが常である。  そして、それを瓶詰めにして冬場は遣り繰りするのが伝統的な過ごしかただ。   「いっぱい貰ってきたわね」   奥の部屋から現れた黒髪の少女が、玄関に広げられた食材を見て嬉しそうに微笑んだ。  少し痩せているが、この辺りでは美人で通る目鼻立ちをしている。  長髪を腰辺りで縛っているだけの髪型で、特に化粧もしていないので肌は荒れ放題だ。    
/1407ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加