プロローグ

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“黒き戦鬼”ガルン・ヴァーミリオン。  西方大陸に起こった最悪の戦争、冥魔大戦の英雄。  外世界からこの世界に進攻してきた外敵・冥魔族と近隣諸国との戦争は一年に及んだとされる。  十万の死者を出した最終決戦地、“冥夢の幻域”から唯一帰還した人間。  帰途のその姿は全身に被った返り血が黒ずみ、黒い悪鬼の様だったと言う。  そこから、ついた通り名が『黒き戦鬼』だ。  現在はこの東方大陸で流れの傭兵をしていると噂されており、数日前の小隊長とのいざこざの報告でその存在を確認。  一日前に届いた宣戦布告の手紙は部下のジョークと思っていた。  それがバロックの知る全ての事柄だった。 「たった一人でこの砦を……三個大隊の兵力を相手に本気で立ち向かう気なのか?」  わなわなと震える身体は、何故か冷汗でびっしょりだった。  あの男が現れてから心臓の動悸が治まらない。  まるで死刑執行の日取りを言い渡された死刑囚のようだ。 「報告します!」  走り込んで来た伝令兵の顔は蒼白である。  まるで氷風呂に放り込まれた直後の様に顔色が悪い。 「正面から侵入してきた賊は一名。自らを“黒き戦鬼”ガルン・ヴァーミリオンと名乗り進攻中。その者を討ち取るために近付いた兵士は剣を交える事なく絶命。切り結んだ兵は数名いた様ですが消し炭にされたとの事です」
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