第十三章 忌み子の姫 終詞

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「視覚に捉えた事象を空間に止める力だ。アレを正面から打ち破るなら、ヤツと同等か、それ以上の魔力を必要とするはずだ……」  ゼロはそう呟くと立ち上がった。微妙にふらついている。 「流石の吸血鬼も、今のはキツイようだな?」  ガルンの言葉にゼロは苦笑した。  両肺と内臓を貫かれたのである。人間なら即死だ。 「お前らこそ気をつけろ。あの触手の尖端の針は出血毒を持っている。人間なら一撃で致死量だ。運が良くても体組織はボロボロにされるぞ」  肺と内臓が爛れてきているのか、ゼロの口元から血が滴り始めた。  立っていること自体、常識はずれに近い。  相手は影を移動し、死角から制止眼で動きを止め、一撃必殺の毒針を撃ち込む。  シンプルだが効果的な戦法である。    ゼロが厄介な相手と言ったのも頷けるところだ。 「まあ……相性を考えれば、俺が相手をすべきだな。レッド・インパルスはどうやら効くようだしな」  ラナンキュラスが周りを見渡す。  長い直線の回廊はかなり広い。
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