第十三章 忌み子の姫 終詞

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 それを確認してからゼロの瞳が赤光を放つ。 「ラナンキュラス! ガルンの後方、五時の方向だ」  ゼロは叫びながら腕を振るう。袖口から銀色の布が飛び出し、影から飛び出した蠍の尾を絡みとった。 「おうよ! 心意象合拳・空鎖功」  黒い人型の時に使った見えざる気功波が大気を走り、蠍の尾にヒットする。  ラナンキュラスの気功は内部破壊。身体を伝播する攻撃だ。  触手は身悶えながら、影に引っ込もうとしたが、布が釣糸の様に引き上げる。 「さて……命懸けのモグラ叩きと洒落込みますか!」  そう言うとラナンキュラスは拳同士を打ち合わせると、軽く中段突きの構えをとった。 「こんな雑魚に構ってる場合では無いからな」  鼻を鳴らしてゼロは渾身の力で布を手繰り寄せる。  滴り落ちる血が、真綿に血を垂らしたように床に広がって行くが、意に介した風もない。  ゼロとラナンキュラスの足止めのお陰で、ガルンは扉前まで難なく近づけた。  この先に姫の存在の光を感じる。  ただ、酷く汚れた気配が纏わり付く。
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