第十三章 忌み子の姫 終詞

19/56
前へ
/1405ページ
次へ
 もともと色白だが、今では顔面蒼白で明らかに血を失い過ぎている。     五メートル四方に広がる血は完全に致死量にしか見えない。 「まさか、お前もくたばるとかは言ってくれるなよ? 流石に俺一人では骨が折れる」  ラナンキュラスの言葉にゼロは皮肉じみた笑みを零した。  唇が釣り上がる。    何故か唇の赤い色だけが、浮いている様に見えた。 「これはわざとだ。これは蜘蛛の糸」 「蜘蛛の糸?」  ラナンキュラスが疑問の声を発した時だった。  ザワリと血が微かに振動する。  数コンマゼロ秒。  それをゼロだけは感知していた。 「かかった」  影から飛び出した触手に、“真下から”血が飛び上がり纏わり付く。  それは液体金属の用に硬化して固まった。  先に釣り上げようとして解かれた布とは分けが違う。 「引っ張り上げるぞ! ラナンキュラスア!」  ゼロは大声で叫ぶと床に、いや、血の上に掌をつける。  血がまるで穴に流れ込むように、蠍の尾が出ている影に吸い込まれていく。
/1405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加