第十三章 忌み子の姫 終詞

20/56
前へ
/1405ページ
次へ
 数瞬で影からこの世のモノとは思えない絶叫が零れ出した。  聞いた者の心臓を鷲掴みにするような、狂気の怪異音が響く。  そして、影から間欠泉のように血が吹き出す。  赤と黒が混じり合った異質な血液。  そこから、身体中を血の槍に貫かれた魔神が吐き出された。 「貰った!」  ラナンキュラスが滑るように前に出る。  落下する魔人に合わせて、渾身の拳を心臓に叩き付けた。  同時に魔人の瞳が輝く。  だが、その光は赤く濁っていた。  ラナンキュラスのレッド・インパルスは領域能力だ。  “見る”では遅い。  既にそこは能力の領域内なのだから。 「心意象合拳・崩脈裂華(ほうみゃくれっか)!」  腹に座るような鈍い音が炸裂した。  魔人の背中が弾け飛ぶ。  気を撃ち込み、心臓に血流を集めて爆ぜ割る奥義は、魔人にも例外無く効果があったようだ。  吹き飛ぶ魔人の亡きがらを眺めてから、ラナンキュラスは撃ち込んだ構えを解いて息吹を吐いた。  額の汗を拭ってからゼロに顔を向ける。
/1405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加