第十三章 忌み子の姫 終詞

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 力の入らない拳が、それでもダークブレイズを握りしめている事に気がついた。  微妙に感じる手応えが、まだ死んではいないと確信させる。  チャクラを活性化させて体力を回復――は出来ない。  胸と腹に刺さった儀式楔から力が抜け出してしまう。  ゆっくりと重たい瞼をこじ開けた。  真っ暗だ。 一瞬失明したのかと嫌な予感が走る。 (何処だ此処は? とにかく楔を外さないと死ぬな……)  楔を抜く事で出血が激しくなる可能性は高い。  後はエーテル治療が間に合うのが早いか、出血死するのが早いかの勝負か? (何もしないで死ぬ選択は有り得ないな……)  何故かグラハトの死に際を思い出した。状態は近いのかも知れない。  鎮静化していた心の焔が燻り出した。  ガルンの根源には、怒りを燃料にする機関が存在しているとしか思えないふしがある。  怒りを力に変える。  最後の力を振り絞って二本の楔を抜き放つ。
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