第十三章 忌み子の姫 終詞

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 それが赤い海原に一様に並んでいるように見える。  死体の山。  いや、死体の海と言えよう。  ガルンは沸き上がってきた吐き気を、我慢することは出来なかった。  既に何度もの嘔吐で内容物は無い。  ただの胃液飲みだ。  口に広がる酸っぱい胃液の味は、それでも自分は生きていると実感させる。 「なるほど……そう言う事か」  心の底にどす黒い焔が燈る。 「ここは死体処理置場……そして、儀式用の供物置場……」  血を砕き取られ、命を搾取され、死んだ後の魂すらむしり取られる地獄の聖地。  ガルンがこの塔に入ってからの吐き気の終着地点。  死肢累々と並ぶ亡きがらの一つとして、自分も此処に放り込まれたと言う事実。 (こんな所で死ぬ? 有り得ねぇ。 あの干物野郎は絶対に屠る!)  ガルンの目付きが変わる。  身体の奥底で新たな光が輝く。七ツ目のチャクラの煌めきが。  地獄の海底で波打つ恩讐の声が聞こえてくる。  老若男女の悲痛な呻き。
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