第十三章 忌み子の姫 終詞

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 死んだ人々の怨念の訴え。 「良いぜ……。この人々の怨念。俺が貰い受ける」  ガルンは死者の海の中で、ゆっくりとその身体を立ち上がらさせた。               ◇  ガラスが細かく振動した。  自身を封じ込めたクラインの壷全体に、いや、部屋全てが微かに震えている。  パリキスはゆっくりと前方の床を眺めた。  真下から感じる異質な気配には――見に覚えがある。  それが何を意味するか理解し、悲しそうな表情を浮かべた。  部屋内部で、儀式用の魔法陣を起動させていたクレゼントは、目敏くその様子に気がついた。 「何が悲しいのですか猊下? 」  心底心配している様は、やはり異常と言えよう。  崇めながら汚し、魔神の依り代にしようとしている行為の矛盾。  パリキスは同じ視線をクレゼントに向けた。 「お主も、自らの姿を省みてはどうかや? その姿では……メルテシオンの民はついてはこぬぞ」
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