第十三章 忌み子の姫 終詞

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「幾ら能力が強力でも、所詮は魔道士。 呪文さえ唱えられなければどうと言う事はない」  ゼロは不敵に笑う。  しかし――クレゼントは身体を潰されても、平然とした顔でゼロを見つめた。  いや、正確にはそちらを向いただけだ。レッド・インパルスは今だ健在である。  クレゼントは口を大きく開くと、黒い霧を吐き出した。 「?!」  何か危険を察知したのか、ゼロは布を解いて後方に跳躍する。    五メートル程後に着地した足がよろめいた。    口を抑えて片膝をつく。 「これは……毒のブレス……」  ゼロの顔色が青ざめていく。  制止眼の魔人の毒も抜けていない状態で、二度目の毒は致命的だ。 「ふん……ナウマク・サウマンダ・ボダナン・オン・ボロン」  クレゼントの身体がまるでバネ仕掛けの様に立ち上がる。  異様な軋み音を立てながら四肢が元に戻っていく。
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