第十三章 忌み子の姫 終詞

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「“ヘルハデス”の不死性は、数ある種族の中でもトップクラスだ。身体を粉砕しようと私は滅びぬ。そして……」  クレゼントの足元から無数の死霊が溢れ出る。  それを見てゼロとラナンキュラスの表情が強張った。 「私の視界を塞いでも無駄だ。こやつらは貴様ら生者への渇望、恨み、嫉妬、羨望で動く。逃げられはせんよ」  ひょいと上がった腕に従うように、死霊が二人に向かう。  ゼロは舌打ちして身体を立て直す。  ラナンキュラスは既に後方に下がっている。霊対防御の無いラナンキュラスでは霊体攻撃を防ぐ手立てがない。 「ちっ……ライザックを連れてくるべきだったか……神聖魔法があれば……」  そこでゼロは、奥に見えるクラインの壷に目を向けた。  そこには、こちらを見つめるパリキスの姿が見える。 「……まだ策はある」  ゼロは意を決すると前進した。  目の見えないクレゼントは、走り来る足音に気付いて眉を寄せた。  自ら死にに急ぐ理由が分からない。
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