第十三章 忌み子の姫 終詞

31/56
前へ
/1404ページ
次へ
 干からびた腕を振るうと死霊達がゼロに猛進する。  走り寄るゼロの身体を死霊達は一瞬で貫いた。  いや、正確には摺り抜けたが正しいだろう。 「おっ?!」  と、声を上げたのはラナンキュラスだ。  何故ならばゼロの身体が霧と化したからである。  クレゼントはラナンキュラスの声を不振に思いながらも、目が見えないので状況が理解出来ない。  漂う霧がクレゼントを越えて、クラインの壷の前に集まるとゼロに姿を変えた。 「姫! お下がりを!」  ゼロの言葉にパリキスは直ぐに従い、血の海に飛び込むと一番奥に移動する。 「はあ!!」  ゼロが渾身の力で硝子に拳を打ち込む。  吸血鬼の腕力はオーガ等の鬼族に匹敵する。  鈍い音が響く。  硝子に血飛沫が着いた。ゼロの拳は砕けていた。  ゼロの目が微妙に細まる。  クレゼントはその音に気付いて、ようやく背後に振り向く。 「……背後に移動したのか?」
/1404ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加