第十三章 忌み子の姫 終詞

32/56
前へ
/1404ページ
次へ
 そこで、何かに気付いたように猛禽のような笑みを浮かべた。 「そうか……貴様が音に聞こえた、王国の守護者――王立近衛騎士団のデイ・ウォーカーか。城勤めしていた時にも一度も姿を見たことはなかったぞ」  ゼロはその言葉をを無視して拳を振るう。  両拳が潰れる嫌な音が響いた。 「無駄だ。その硝子は妖精琥珀で出来ている。妖精を魂ごとすり潰して精製した特注品だ。例え巨人族(ジャイアントクラス)の一撃を受けても砕けはせんよ」 「くだらん」  ゼロは砕けた両拳でひたすら硝子を殴る。  鈍い衝撃が走った。  吸血鬼は驚異的な再生能力を持つ。拳は瞬時に再生しているようだが……これでは殴る度に拳が砕けていくだけだ。 「巨人の一撃に耐え得ると言うならば、巨人の一撃を越えるまでだ」  その言葉にクレゼントは笑い出した。 「まさか吸血鬼から根性論を聞くことになるとは……。無駄だ。貴様が数百発、拳を叩きつけようが砕ける事は無い」  その言葉に今度はゼロが笑い出した。
/1404ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加