第十三章 忌み子の姫 終詞

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 ガルンを刺し貫いた楔と同じ、対霊効果の儀式楔が。  ゼロは吐血して膝を着く。 「それ以上はやらせん」  吹き飛んだ先で、クレゼントが奇怪な蜘蛛の様に立ち上がった。  両手には楔を撃ち出した人面相が浮き出ている。  ラナンキュラスの気の衝撃を受けたためか、首と四肢がおかしな方向に曲がっていたが、それもゆっくりと元に戻っていく。  ゼロは後方に目を向けた。  倒れ臥しているラナンキュラスの姿が見える。  背中から飛び出している楔は同種のものだ。  クレゼントも満足そうに倒れたラナンキュラスを眺める。 「此処は魔神を呼ぶための冥道の祭壇だ。魂、精を集める“吸魂神殿”の結界が構築されている。死と穢れにより霊瘴と魔瘴が満ちた黄泉の領域。ただの人間にしては、死者の領域でよく動けたと言うべきだろう。本来ならとうに発狂している筈だ」  結界の効果で動きの鈍ったラナンキュラスには、死霊を躱しながらクレゼントの楔を避ける事は出来なかったのだろう。
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