第十三章 忌み子の姫 終詞

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「この楔は、霊体の霊脈穴に引かれて進む特性がある。磁石の様なものだ。そして、刺されば霊気を分解、放出し続ける。さて? 吸血鬼と言えど、霊体が砕けても生き返るのかな?」  ゼロは震える手で何とか楔を握ると一気に引き抜いた。  大量の血が硝子に降り懸かる。 「ほう? 吸血鬼種は心臓を貫かれれば死ぬと聴いていたが…… そうか左胸に寄り過ぎたようだな。実際、心臓は中心よりだったか」  クレゼントはトドメとばかりに掌を向けた。 「今は“目が見える”。今度は外さん。塵と化すがいい」  ラナンキュラスが気絶してしまっては、能力が解除されたのは当然か。  クレゼントの瞳に力が宿る。  その時だった。  かたかたとクラインの壷が揺れ始めたのは。  そのまま、フロア全体が揺れ始める。 「何んだ?!」  クレゼントの声は、回廊から轟く爆音で掻き消された。  響く振動と共に大量の爆煙がドアから吹き込まれる。  三人の視線は出入口に注がれた。
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