第十三章 忌み子の姫 終詞

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 煙りの中から無数の蝶が現れる。まるで煙りが変じて姿を変えたようだ。  その中で何かが光る。  煙りを抜けて何かが二つ飛び出した。  一つはクレゼントの腹部に突き刺さり、一つはゼロが刻んだクラインの壷のヒビに突き刺さる。 「ごぅあ?!」  クレゼントの絶叫と、硝子がひび割れていく音が重なった。  クラインの壷のヒビから血が溢れ出す。後は血の水圧に負けて、ガラスは簡単に内側から砕け散った。  外に流れ出る血の洪水の勢いに乗ってパリキスが中から飛び出すと、それをゼロはよろめきながらも受け止めた。 「お待たせしました。姫」 「よく来てくれました、アズマリア」  二人は揃って小さく笑みを浮かべる。  そして、同時に扉に目をやった。 「わらわの騎士が参ったようだな」 「化けたか……」  爆煙を抜けて悠然と現れた少年を見て、二人は笑みを凍りつかせた。
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