第十三章 忌み子の姫 終詞

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 頼もしい筈の援軍から出ている鬼気は、体感温度を数度下げるには十分な殺意を纏っている。 「馬鹿な?! 貴様は死に体だったはず」  クレゼントは現れたガルンを見て顔を歪ませた。  全身血まみれの姿はリビングデッド顔負けである。  手にした刀から溢れる水の球だけが鮮明な輝きを放ち、それが蝶に変貌していく様は非常にシュールな光景だ。  禍々しい気配にパリキスは悲痛な表情を浮かべた。 「ガルン。お主は……その選択をとったのか……」  呟くパリキスの手にゼロは優しく触れると、 「姫。ここは彼に任せて脱出します」 と、言って王女を軽やかに抱き起こした。  パリキス姫の表情が強張る。 「待て、ガルン一人では無理であろう? アズマリアと協力すればあの者を止められるかも知れん」  それを聞いてゼロは首を振った。 「今の私では、あの不死者は滅ぼしきれない。ここは退きます」  有無も言わさず宣言すると、ゼロはパリキス王女を抱えて出口に走り出す。
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