第十三章 忌み子の姫 終詞

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 ガルンの現在の“病んだ回復力”は死者の幽体を喰い漁った結果だったのだ。  そう、ガルンは攻撃してきた死霊の幽体すら喰らっていたのである。  死霊を“幽体喰い”の能力で捕獲し、咀嚼し、分解。チャクラ穴に無理矢理取り込み練り潰す。  後はチャクラで幽体を霊気に変換してしまえば、全て自分の力として還元可能なのだ。  惜しむべきは、不浄の霊ゆえか、そのままでは霊威力生成には使えない事ぐらいであろう。  しかし、ガルンは気付いていない。この行為により、自らの存在が酷く歪んでいく事を。 「この純度の炎は、練り上げるのに本来かなり力が必要なんだが……。お前のお陰で一瞬だ」  そう呟くとガルンは魔剣を振り下ろす。  黒い焔は火山灰のような、妙な散り方をしながら降り注いだ。  クレゼントは咄嗟に身を引いた。  不死身にとって、炎などは体表を焼く程度のものでしか無い。  しかし、不死者になって失った危機感が、深層心理に残る恐怖が身体を付き動かしたのだ。
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