第十三章 忌み子の姫 終詞

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 炎は瞳の一つに飲み込まれる。  吸奪眼だ。  ガルンは目を見開いた。  魔導書の中から人影が吐き出された。  原型はクレゼントだが――魔人化している。  右腕の肘から先が無いのはその名残か。  身体の至る所に瞼がある。  ガルンの直感が危険信号を送る。  背から蝶白夢を抜くのと、瞳が一斉に開かれるのはどちらが早かったか。  ガルンの眼前の空間が歪む。  瞬間的にチャクラを脚力に回したのか、ガルンは無意識に後方に跳躍していた。  空気を吸い込む妙な高音と共に、歪みに辺りの物が飲み込まれていく。  空に舞っていた蝶が飲み込まれて、一瞬で水しぶきに変わる。  ガルンを追うように、空間に真空の穴が発生する。  避けるガルンの動きが、いきなり止まった。  まるで見えない何かに空中で絡めとられたような、不自然な停止。  次の瞬間、空間が爆発した。  直撃を受けて吹き飛ぶガルンに、新たな瞳が向く。  瞳孔が収縮する。
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