第十三章 忌み子の姫 終詞

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 今、使用した魔眼も、空穿眼(くうせんがん)、制止眼、爆散眼、染熱眼(せんねつがん)、操影眼と五つでしかない。  これの十倍の魔眼を操る魔人。  まともに戦って勝てる存在が、この地上にどれだけ存在する事か?  しかし、クレゼントの嘲笑に重なってもう一つの嘲笑が上がった。  クレゼントの笑みがピタリと止まる。  “後方についている魔眼”が辺りを見回すが、何も見えない。 「何モノダ?!」  身体全体で声を捜す。 「完全に新生した魔人ならやられていたかもな……」  フと聞こえた冷めた声色。  ようやく見つけたのは、迫り来る黒い焔だった。  気付いて吸奪眼を発動する。  妙な火花のような音が真横から聞こえた。 「!?」  違和感に気付いた時は既に遅かった。  上半身に黒い焔が降り懸かった。  一秒。  クレゼントが疑問に思考を回せた時間は僅かそれだけだった。  上半身は一秒で黒い焔に蒸発させられてしまっていたからだ。
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