第十三章 忌み子の姫 終詞

51/56
224人が本棚に入れています
本棚に追加
/1314ページ
 残った身体もゆっくりと黒焔が貪り喰っていく。  辺りを暗く照らす有り得ない炎を見つめながら、ガルンは蝶白夢とダークブレイズを背中にしまった。  腕を吹き飛ばされ、串刺しにされた筈のガルンは陽炎のように消えている。  クレゼントはガルンの始めの不意打ちである楔を受け、それを抜く時に“水蝶”を手で打ち払ったのが、致命的な間違いだったと最後まで気付かずに終わった。  精神汚染による幻覚と視覚不全。  魔眼とはターゲットを視覚に捉えて発動するのが、完全なる発動条件である。  視界に入らない物には効果が薄いのだ。  魔導書に呑まれて出て来たクレゼントが、完全に別人格、別存在に変貌していれば、精神汚染も無く失った右腕も新生した真の五十眼の魔人であったであろう。  しかし、クレゼントの強すぎる自我が魔神の精神に打ち勝ってしまった。  その為、精神汚染を抱えた状態の魔人が生まれたのだ。
/1314ページ

最初のコメントを投稿しよう!