第十四章 憎悪の灯と祈りの調べ

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 メルテシオンの城下街。外れの一角は喧騒に包まれていた。  酒場が密集した地域で、余り治安はよろしく無い。もっぱら使用しているのが黒鍵騎士団やゴロツキなので、皆、臑に傷がある者ばかりだ。 「たあー! ただ酒うめぇー!」 『隼の群れ亭』と言う老舗の酒場で、一気にジョッキを傾けてネーブルは上機嫌で騒いでいる。  メルテシオンの元服は十四歳であり、飲酒も可能な年齢はクリアーしているが、子供がはしゃいでいるようにしか見えない。  大テーブルを囲んでいるのは、ガルン、ネーブル、グレイ、ライザック、ハオロン、それに白き銀嶺の六人だ。  陽気に騒いでいるテーブルで、ガルンは一人渋い顔でジョッキを眺めていた。  アルコールと言うものを摂取した事が無いガルンには、珍妙な飲み物でしかない。  飲まされているのは麦芽を主原料として醸造した、炭酸ガスを含むアルコール飲料と言う漠然とした印象しかない。 「なんだ? お前、酒も呑めないのかよ」  既に出来上がっているネーブルがケタケタ笑う。 「お前、今まで一回も飲みに付き合わなかったのは下戸だからか?」 「情けないガキめ! 酒盛りなら俺の圧勝のようだな」  グレイの言葉にハオロンの馬鹿笑いが続く。  ガルンはチビチビ酒を啜って顔をしかめた。
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