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続いて報告書箱から、三日前の廃棄処分リストをとり出す。
ぞんざいに机の上に拡げると、そこから黒い出で立ちの男の姿――ガルンの姿絵を発見した。
「こいつか」
第二中隊、威力偵察小隊零四連絡事項と書かれている。
辺境区域北K四四にて、ケト族の集落を発見。
接収領土に認定。
接収作業中、そこに居合わせた黒衣の男と小競り合いになる。
無駄な戦いを回避するため撤退。
接収物はリストに。
被害。
小隊長死亡。
部下四名死亡。
男の身元調査は添付ファイルへ。
「こんな村に、何故奴が?」
それは、ただの偶然でしかなかった。
村から略奪の限りを尽くしていた場所に偶然、死神が歩いていたに過ぎない。
部下の勝手な惨奪行為。
これから搾取するつもりの蛮族の村などと、見て見ぬ振りをしただけの無意な行動。
それがバロックの悪夢開始の引き金になっていたのだが、そんな事を考えている時間さえ彼には残されていなかった。
ガルン・ヴァーミリオンの調査書を食い入るように眺める。
バロックに出来た事はそんな陳腐な事だけだった。
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